言わずもがな、家は一人でつくることはできません。
そこでまずはじめたのが、仲間探しでした。声をかけたのは旧友たち。当時、彼らもそれぞれの仕事で脂が乗りだした頃。それでも、「来るべき東海沖地震にも耐えうる、強い家をつくりたい」という思いに賛同し、続々と仲間が集まりました。そして、くだんの報道があった2年後の1978年。予測される震源地域に近い静岡県浜松に誕生したのが、一条工務店だったのです。
そこからは、一心不乱に試行錯誤の日々でした。分析を重ね、なぜ今の家が地震に弱いのか、欠点を導き出し、新しい時代の木造住宅のあり方を自分たちなりに模索しました。
「梁山泊」。中国の水滸伝に登場する、108の個性を持った英雄たちが集い、国を救った要塞を、こう呼びます。この頃から一条は、社員一人ひとりの個性と知恵を結集した、「現代の梁山泊」を追求してきたのです。
ただ、やればやるほど湧いてくる「もっと、もっと」という感情。
「どうすればもっと、激しい揺れにも強くなる?」「どうすればもっと、住む人の不安を取り除ける?」
どれだけ熱意があっても、「もっと」を求めれば求めるほど、眼前に立ちはだかる大きな壁。当時の社内メンバーの力だけでは解決できない課題が、次々に浮かび上がってきたのです。
じゃあ、どうすれば……。
当時のメンバーが出した答えは、極めてシンプルでした。
「分からないことがあるなら、一番詳しい人に聞きに行こう」